アマチュア無線に許可されるローバンドの周波数を広げたい
我が国のアマチュア無線は敗戦の影響を強く受けて再スタートしました。その法制度は連合国占領下の1950年に施行された電波法に始まります。制度の詳細が整備され実際に運用が始まったのは電波法施行2年後サンフランシスコ平和条約が発効した後でした。当時のアマチュア無線界は早期再開自体が最大の関心事であったため欧米諸国に比し今に残る厳しい免許制度を甘受しての再開でしたが、この頃は朝鮮戦争の真っ最中でしかも無線といえば誰もがスパイを連想する社会情勢でしたから厳しい免許制度での再開はやむを得ないことだったと思われます。
電波は通信、放送はもとより家電、運輸、漁業、気象、防災、国防、治安など社会のあらゆる場面で広範囲に利用されています。有限である電波資源を公平かつ能率的に利用するためには整合性のある法規制は必須であり、無秩序な利用は電波資源の有益性を損うことになります。
一方、電波法ではアマチュア無線は『金銭上の利益のためでなく、もつぱら個人的な無線技術の興味によって行う自己訓練、通信及び技術的研究の業務をいう』と定義されています。このことは国際電気通信連合憲章の無線通信規則においても同様に定義されています。すなわちアマチュア無線は国際法によって個人の自由な無線技術を追求する知的権利として保証されています。
しかしながら電波法にあってはアマチュア無線局といえども他の無線局いわゆるプロ局と基本的に同等であり、アマチュア無線局を開局運用するためには無線従事者免許を得、開局(変更)申請を行い、落成(変更)検査を受け、無線局免許状を受理するという各種の手続を経なければなりません。
再開7年後には1級、2級に加えて電信級・電話級の初級資格が設置され、その後小電力局は保証認定制度により無線局検査が省略されたり、さらには技術適合機制度などの改正が行われました。ただこれらの改正は手続の簡略さを図ったにすぎず、依然として個人の自由な無線技術の追求活動は厳しく制限されたままで、アマチュア無線の実情と法規には大きな乖離が生じ、それは新スプリアス規格など益々大きくなっています。
我が国のアマチュア無線は日本人が持つ科学技術に対する旺盛な知的好奇心とも相まって世界有数のアマチュア無線局数を誇るまでに発展し、製造業産業セクターとしても国際的に確固たるポジションを得るに至りましたが、1995年をピークに免許数は1/3以下に低下しています。アマチュア無線の衰退は電子技術立国を支える技術者の減少を招きかねず、実効性のある対応策が求められるところです。
電波は国境を越えて全世界に伝わり交信ができるため世界共通のルール(国際電気通信連合条約)に基づいて周波数の使用区分が詳細に決められています。戦後連合国の占領下で制定された日本のアマチュア無線の周波数、とりわけローバンドは、きわめて厳しい制限が付加されました。それから60数年が経過し、ローバンドの周波数は少しずつ拡大されては来ましたが、依然として世界標準には遠くおよびません。
そこで国のこの政策に基づき160mバンド、80mバンド、75mのローバンドの周波数の拡大を求めたいと思い、『ロ-バンド拡大促進協会』を立ち上げることを決意しました。周波数問題は国の専管事項であり、岩盤規制の変更は容易なことではない点は重々承知していますが、じっと黙していては何も変わらないでしょう。みんなで協力して国に我々の切なる要望を伝えようではありませんか。
協力会員募集
まず最初の作業として、今なお免許上「官公庁の無線局が多数占有しているローバンド」の実態調査を行います。その調査を踏まえ全国の意見として集大成しようとするものです。
事務局 JA1ELY 草野利一